韓国「虚偽・捏造情報根絶法」施行、インフルエンサーは何をすると罰せられるのか徹底解説

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2026年7月7日、韓国で「虚偽・捏造情報根絶法」と呼ばれる改正情報通信網法(じょうほうつうしんもうほう)が施行されました。

虚偽・操作情報を流して他人に損害を与えた発信者に対し、裁判所が最大5倍の懲罰的損害賠償を命じることができるという、かなり踏み込んだ内容です。

悪質な違反を繰り返せば、最大10億ウォン(日本円でおよそ1億円)の課徴金まで科される可能性があります。

YouTubeやSNSで情報発信をしている人にとって、決して他人事ではありません。

この記事では、法律の中身と、日本のインフルエンサーにどう関係してくるのかを、できるだけかみ砕いて解説します。

何が変わったのか、まずは背景を整理する

2026年7月7日に施行されたのは、情報通信網法(正式名称「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」)の改正版です。

通称は「虚偽・捏造情報根絶法」で、韓国国内では施行前から大きな注目を集めていました。

この法律が生まれた背景には、韓国で社会問題化していた「サイバーレッカー」という存在があります。

サイバーレッカーとは、再生回数や広告収益を目的に、芸能人や著名人に関するゴシップやデマを繰り返し発信する炎上系YouTuberを指す韓国特有の俗称です。

実際、人気アイドルグループIVEのメンバーを中傷したとされるYouTubeチャンネル「タルドク収容所」の運営者は、本人や所属事務所STARSHIP Entertainmentから相次いで提訴されてきました。

2025年6月には、裁判所がSTARSHIP側への5000万ウォン(日本円でおよそ550万円)の賠償を命じる判決を出しています。

こうした名誉毀損訴訟自体はこれまでも存在しましたが、賠償額が発信者の得ている利益に見合わず、「デマで稼いだ方が得」という状態が長らく問題視されてきました。

李在明(イ・ジェミョン)政権はこうした状況を重く見て、法改正によって抑止力を大幅に強化する方針を打ち出したのです。

具体的に何が変わったのか、数字で見る新ルール

今回の法改正の柱は、大きく2つあります。

1つ目は、懲罰的損害賠償の導入です。

虚偽・操作情報の流通によって他人に損害を与えたと裁判所が認めた場合、実際の損害額の最大5倍までの賠償を命じることができるようになりました。

2つ目は、課徴金制度の新設です。

放送通信委員会(ほうそうつうしんいいんかい、韓国で放送・通信分野を管轄する行政機関)は、悪質な違反者に対し最大10億ウォン(日本円でおよそ1億円)の課徴金を科すことができます。

ただし、これらの厳しい措置は誰にでも適用されるわけではありません。

適用対象には、次のような明確な基準が設けられています。

直近3ヶ月間に3件以上の情報を掲載し、広告等で収益を得ていること

登録者数が10万人以上、または月平均再生回数が10万回以上であること

これら両方の条件に当てはまる発信者だけが、5倍の懲罰的賠償の対象になります。

課徴金の対象はさらに絞り込まれています。

上記の加重賠償の対象者であること

裁判所で違法な虚偽・捏造情報と確定判決を受けた情報を、2回以上繰り返し流通させたこと

この両方に該当する場合にのみ、最大10億ウォンの課徴金が科される仕組みです。

つまり「うっかり誤った情報を流してしまった」というだけでは対象にならず、確定判決が出たにもかかわらず開き直って同じ情報を流し続けた、悪質なケースに絞って重い制裁が科される設計になっています。

個人的には、この線引きは妥当だと感じます。

一般の発信者や、うっかりミスをした人まで一律に萎縮させるのではなく、確信犯的にデマで稼ぎ続ける一部の悪質な発信者に狙いを定めているからです。

これまで韓国の名誉毀損訴訟では、賠償額が数百万ウォン程度にとどまるケースも珍しくなく、広告収益で数千万ウォンを稼ぐ発信者にとっては「痛くもかゆくもない」との批判がありました。

それを踏まえると、実損害の5倍という倍率と最大10億ウォンという課徴金の上限は、収益構造そのものを崩しにいく水準の金額だと言えます。

対象になるのはどんな人か、日本のインフルエンサーにも関係あるのか

気になるのは、この法律が日本のインフルエンサーにも影響するのかという点です。

結論から言うと、法律そのものは韓国国内の情報通信網を対象にしたものであり、日本の発信者すべてが直接の適用対象になるわけではありません。

ただし、注意しておきたいケースもあります。

例えば、韓国の芸能人やアイドルに関するゴシップやスキャンダルを扱う日本語チャンネルの中には、登録者数10万人を超えるものも珍しくありません。

こうしたコンテンツが韓国国内でも視聴され、対象人物や事務所に実害を与えたと判断された場合、韓国の裁判所で争いになる可能性は理論上ゼロではありません。

もっとも、国境をまたいだ場合の管轄や執行の実務は複雑で、今のところ日本の発信者が実際に処分を受けた事例は確認されていません。

それでも、韓国の著名人を扱うコンテンツで収益を得ている人は、情報の裏取りを今まで以上に丁寧に行う姿勢が求められると言えるでしょう。

施行令案の段階では、メッセンジャーアプリやレビューサイトをどこまで規制対象に含めるかについても、引き続き議論が続いています。

筆者の見解としては、K-POPやドラマなど韓国コンテンツを扱う日本のチャンネルが急増している今、対岸の火事と決め込むのは早計だと考えます。

「日本国内向けだから関係ない」と思っていても、動画は国境を越えて拡散するものだからです。

プラットフォームにも新しい義務が課される

今回の法改正で変わるのは、発信者個人の責任だけではありません。

ネイバー(NAVER)やカカオ、グーグル、メタ、Xといった、1日あたりの利用者数(DAU)が100万人を超える大規模プラットフォームにも、新たな義務が課されます。

具体的には、虚偽情報を通報できる仕組みを整えたうえで、通報を受けた情報について速やかに削除やアカウント停止などの対応を行うことが求められます。

さらに、こうした対応の状況について6ヶ月ごとに透明性報告書を公開することも義務づけられました。

プラットフォーム側が「まず自社の判断で対応する」形になるため、実質的な一次審査の役割をプラットフォームが担うことになります。

対象となるのは、ネイバーやカカオといった韓国発のサービスだけでなく、グーグルやメタ、Xのように日本のユーザーにもなじみのある海外企業も含まれる点は押さえておきたいところです。

業界や言論界からは懸念の声も

施行直後から、韓国の言論界や市民社会では「表現の自由の萎縮」を懸念する声が相次いでいます。

韓国記者協会は、「虚偽・操作情報の拡散を防ぎ、オンライン空間の責任性を高めるという立法趣旨に異論はない」としつつも、「いかなる法律も、憲法が保障する表現の自由や国民の知る権利を萎縮させる方向で運用されてはならない」との立場を示しました。

特に指摘されているのが、真偽の一次判断を政府ではなくプラットフォーム企業の「自律運営方針」に委ねている点です。

訴訟リスクを避けたいプラットフォームが、合理的な批判や単なる疑義の提起にとどまる投稿まで、過剰に削除してしまうのではないかという懸念です。

AP通信など海外メディアも、この法律を報じる中で同様の萎縮効果への懸念を伝えています。

規制する側とされる側、双方の言い分に一定の理があるだけに、今後どのような運用がなされるかを注視する必要がありそうです。

実際、施行から日が浅いこともあり、法律が適用された第一号の事例はまだ確認されていません。

どんな投稿が最初に削除や賠償命令の対象になるかによって、今後の運用の目安が定まってくると見られており、その動向には引き続き注目が集まっています。

日本の関連制度と比べてみると

日本にも、インフルエンサーの発信に関わる規制がまったくないわけではありません。

代表的なのが、2023年10月1日に施行された景品表示法(けいひんひょうじほう)のステルスマーケティング規制です。

これは広告であることを隠して宣伝する、いわゆる「ステマ」を禁止するもので、違反した事業者には措置命令が出され、命令に従わない場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。

ただし日本のステマ規制が対象にしているのは、あくまで広告を依頼した事業者側であり、依頼を受けたインフルエンサー個人は直接の規制対象にはなっていません。

一方、韓国の今回の法律は、情報の真偽そのものと、発信者個人の責任に踏み込んでいる点で性格が異なります。

「広告だと隠すこと」を取り締まる日本と、「嘘の情報で人を傷つけること」に懲罰的な賠償を科す韓国、規制の狙いは異なりますが、どちらも情報の受け手の信頼を守ろうとする点では共通しています。

日本では2023年の調査時点で、主要国の中でステマ規制を持たない唯一の国だったという指摘もあり、後追いで制度を整えてきた経緯があります。

一方の韓国は、ステマ表示の義務化に加え、今回さらに踏み込んで虚偽情報そのものに懲罰的な金銭ペナルティを科す仕組みを整えたことになり、発信者への規制圧力という意味では日本より一歩先を行っていると言えそうです。

制度名 主な対象 罰則・措置
韓国:虚偽・捏造情報根絶法
(2026年7月7日施行)
登録者10万人以上、または月平均再生回数10万回以上の発信者 実損害額の最大5倍の懲罰的損害賠償、最大10億ウォンの課徴金
日本:ステマ規制
(景品表示法、2023年10月1日施行)
広告を依頼する事業者(インフルエンサー本人は対象外) 措置命令、違反時2年以下の懲役または300万円以下の罰金

知っておきたい豆知識

施行令案の段階では、規制の細部についてまだ調整が続いています。

KOREA WAVEなどの報道によれば、カカオトークのようなメッセンジャーアプリでのやり取りは、今回の規制対象には含めない方向で議論が進んでいるとされています。

また、商品レビューサイトの扱いも検討課題として残っています。

なお韓国では、これとは別に公正取引委員会(こうせいとりひきいいんかい、韓国の消費者保護行政を担う機関)が、インフルエンサーに広告表示(#広告、#協賛など)を義務づけるルールも運用しており、今回の法律と合わせて情報開示のルールが幾重にも敷かれている点も覚えておきたいところです。

まとめ

韓国の「虚偽・捏造情報根絶法」は、最大5倍の懲罰的損害賠償最大10億ウォンの課徴金という、かなり強い抑止力を持つ法律です。

対象は登録者数10万人以上などの一定規模を超えた発信者に絞られており、確定判決を受けた情報を繰り返し流した悪質なケースが主なターゲットになっています。

日本の発信者に直ちに適用されるわけではありませんが、韓国の著名人を扱うコンテンツで収益を得ている人にとっては、無関係とは言い切れない法律です。

表現の自由とのバランスをどう取るか、今後の運用が注目されます。

Wooder

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