ボーイ・ジョージはなぜ「ジーザス・クライスト・スーパースター」を降板したのか
80年代を代表するアーティスト、ボーイ・ジョージが、ロンドンのミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」への出演を電撃降板しました。
きっかけとなったのは、自身が発表した親イスラエル的な内容の楽曲への激しい批判でした。
この記事では、何が起きたのか経緯を整理しながら、今回の騒動が持つ意味を考えていきます。
降板までの経緯
ボーイ・ジョージは、ロンドンのウエストエンドを代表する劇場ロンドン・パラディウムで上演される「ジーザス・クライスト・スーパースター」に、8月3日から15日までの期間限定で「ヘロデ王」役として出演する予定でした。
しかし本人のマネージャーであるポール・ケムズリー氏が、SNS上で降板を発表しました。
降板の引き金となったのは、ボーイ・ジョージがX(旧Twitter)に投稿した楽曲「Od Nirkod (We Will Dance Again)」でした。
「#Shalom」というキャプションとともに公開されたこのレゲエ調の楽曲は、AIを活用して制作されたとされています。
歌詞には「You say genocide, I say war(あなたはジェノサイドと言うが、私は戦争だと言う)」という一節が含まれており、公開直後から大きな反発を招くことになりました。
なぜここまでの騒動になったのか
曲のタイトルにもなっている「We Will Dance Again(私たちはまた踊る)」というフレーズは、2023年10月7日にハマスによって実行された音楽祭襲撃事件の後、イスラエルの人々の間で希望を示す言葉として使われてきた表現です。
つまりこの楽曲は、単なる応援ソングではなく、イスラエルの軍事行動を擁護し、ガザでの出来事を「ジェノサイド(集団虐殺)ではない」とする立場を明確に打ち出した内容だったことになります。
この内容に対し、音楽業界からも強い批判が寄せられました。
バンド「ヘヴン17」の創設メンバーであるマーティン・ウェア氏は、この楽曲を「あからさまな親ジェノサイド・反パレスチナのプロパガンダ」と呼び、「ジョージ、恥を知るべきだ」とコメントしています。
団体「Artists for Palestine UK」も声明を発表し、「ガザで起きている甚大な苦しみと殺戮に対する共感の欠如を示している」と指摘しました。
一方で、共演していたブロードウェイ俳優のパトリック・クラントン氏からは、パフォーマンスの質そのものに対する厳しい言葉も出ていました。
「彼はひどいパフォーマーで、彼と同じ舞台に立つのが恥ずかしかった」と述べており、楽曲への批判と役者としての評価の両方が重なった状態だったことがうかがえます。
マネージャーの対応と楽曲の削除
批判の高まりを受け、問題の楽曲はストリーミングサービスから削除されました。
マネージャーのケムズリー氏は、降板の判断について「アーティストの最善の利益のために行動しつつ、他者への敬意も示す責任がある」と説明しています。
Instagramでの発表では「作品が注目の中心であり続けられるよう、身を引くのが正しいと感じた。関係者全員が相互の敬意と善意を持って前に進めるように」ともコメントしました。
個人的な見解ですが、この一連の対応の速さは注目に値します。
楽曲の投稿から降板発表までわずか数日という短期間で事態が収束に向かったことは、SNS時代における”炎上”の伝播速度の速さを象徴していると言えるでしょう。
政治的に極めてデリケートな話題を扱う楽曲を、AIを使って手軽に制作・発信できてしまう時代だからこそ、発信前の慎重さがこれまで以上に問われているのかもしれません。
補足情報:降板後の舞台はどうなるのか
ボーイ・ジョージの後任として、俳優のリチャード・アーミテージがヘロデ王役を引き継ぐことになりました。
本作の上演は9月5日まで予定されており、キャスト変更後も公演自体は継続される見通しです。
なお、ボーイ・ジョージ本人からは今回の騒動について、まだ直接的なコメントは出ていません。
まとめ
ボーイ・ジョージは、AIで制作した親イスラエル的な楽曲「We Will Dance Again」への激しい批判を受け、ロンドン公演「ジーザス・クライスト・スーパースター」への出演を降板しました。
後任にはリチャード・アーミテージが決定し、公演自体は9月5日まで続く予定です。
国際的に意見が分かれる政治的テーマを扱う表現活動が、著名人のキャリアにどれほど直接的な影響を与えるかを示す出来事として、今後の動向が注目されます。