「空港名を『ドリー・パートン』に!」5万人が署名した理由とは?
テネシー州の象徴を空の玄関に迎えたい市民運動の全貌
「出発はパートンから(Departin’ from Parton!)」——このキャッチーなスローガンとともに、ナッシュビル国際空港の改名を求める署名運動が全米で話題を呼んでいます。
2025年1月に始まったこの運動には、わずか3ヶ月で5万人近くが賛同。
カントリーミュージックの女王ドリー・パートンへの敬意と、彼女が築いた慈善事業の功績をたたえる市民の声が、テネシー州の政治を動かそうとしています。
しかし一方で、元大統領ドナルド・トランプ氏の名を冠する法案との競合や、改名に伴う1000万ドル(約15億円)の費用問題など、越えるべきハードルも少なくありません。
本記事では、署名運動の背景から専門家の分析まで、改名騒動の核心を多角的に掘り下げます。
ドリー・パートンって誰?
音楽界のレジェンドから慈善家へ
76年のキャリアを持つドリー・パートンは、『Jolene』『9 to 5』など数々のヒット曲で知られるカントリーシンガー。
しかし彼女の真価は、1995年に始めた「イマジネーション・ライブラリー」事業にあります。
このプログラムでは、生後から5歳までの子どもに無料で月1冊の本を配送し、これまでに1億冊以上を寄贈。
2024年にはハリケーン被災地へ200万ドル(約3億円)の義援金も提供しました。
署名運動の共同発起人ダン・ディオン氏は「ドリーは音楽だけでなく、教育と災害支援を通じてテネシーの顔となった」と語ります。
空港改名の政治的攻防
トランプ氏vsパートン氏の”名前戦争”
2025年1月、共和党のトッド・ワーナー議員が「トランプ国際空港」への改名法案を提出。
これに対抗する形で市民側がChange.orgで署名を開始しました。
法案は2月に委員会で否決されましたが、反対派のジャスティン・ジョーンズ議員は「トランプ氏には地域との接点がなく、改名費用も無駄」と批判。
一方、パートン支持者は「政治的主張ではなく、純粋な州の英雄讃歌」と主張しています。
ナッシュビル空港の歴史的価値
「ベリー・フィールド」から国際空港へ
1937年開港の同空港は、元々WPA(公共事業促進局)プロジェクトとして建設され、テネシー州高速道路局長ハリー・S・ベリー氏の名を冠していました。
1988年に現在の名称に変更されるまで、軍事基地としても機能した歴史を持ちます。
航空史家のジョージアナ・マコネル氏によれば「ナッシュビルには1917年以降、6つの空港が存在した」とのこと。
改名にはこうした歴史的経緯も考慮が必要です。
改名実現への課題
1000万ドルの費用と手続きの壁
トランプ氏改名案で試算された費用は、看板交換や商標更新などで計1034万ドル。
パートン案でも同程度が見込まれます。
現行ルールでは、空港運営団体MNAA(メトロポリタン・ナッシュビル空港局)の承認に加え、州議会の承認が必要。
署名運動が立法化されるには、さらなる世論の後押しが不可欠です。
専門家の見解
「文化アイコン化」する空港名の傾向
ニューオーリンズの「ルイ・アームストロング空港」やローマの「フィウミチーノ空港」のように、文化人に因む空港名は増加傾向にあります。
航空アナリストのマイケル・ボイド氏は「観光促進効果はあるが、政治的中立性が課題」と指摘。
一方で地元経済団体は「ドリーの名は年間1200万人の利用客にアピールする」と賛同しています。
空港コード「BNA」の運命
現在の空港コードBNAは旧称「Berry Field Nashville」の頭文字。
仮に改名されても、IATA(国際航空運送協会)規定によりコード変更は不要ですが、愛称として「Departin’ from Parton」が定着する可能性があります。
まとめ
署名運動は単なるファン活動ではなく、教育・災害支援・LGBTQ+支援など多面的な功績を評価する市民運動です。
一方で、歴史的名称の変更には慎重な議論が必要。読者の皆さんも、Change.orgの署名ページで賛否を表明することで、この議論に参加できるでしょう。
空港の名称が「誰の物語」を語るのか——テネシー州の選択から目が離せません。