加熱不十分な鶏肉で医師がギラン・バレー症候群に 5カ月入院・車いす生活の実態

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加熱が不十分な鶏肉を食べたことがきっかけで、67歳の医師が全身の自由を奪われ、車いす生活になった。

そんな体験談が朝日新聞の報道をきっかけにX(旧Twitter)で改めて拡散され、2026年8月にトレンド入りするほどの話題になっている。

原因となったのは「カンピロバクター(食中毒を起こす細菌の一種)」による感染から発症したギラン・バレー症候群という病気だ。

当事者は都内在住の金吉男さん(67)で、症状の急激な悪化から約5カ月間の入院を経験している。

「とりわさ」など生や半生の鶏肉料理に馴染みのある人も多いだけに、SNS上では「知らなかった」「怖すぎる」といった反応が相次いでいる。

何が起きたのか、事の経緯

金さんが異変に気づいたのは、2023年12月27日の朝だったという。

自宅で左手に違和感を覚え、その後まもなく足も動かしづらくなっていった。

症状は数日のうちに全身へと広がり、やがて呼吸をすること自体が困難になったため、人工呼吸器を装着したうえで集中治療室(ICU)に入ることになった。

最終的に車いすが必要な状態にまで至り、入院期間は約5カ月間におよんだ。

金さん自身は医師という立場でありながら、この症状の背後にあったのが数日前に口にした加熱不十分な鶏肉だったと、後になって振り返っている。

ギラン・バレー症候群とはどんな病気なのか

ギラン・バレー症候群とは、手足の筋肉を動かす末梢神経(まっしょうしんけい、脳と脊髄から体の各部に伸びる神経)が、自己免疫の異常によって攻撃されてしまう病気だ。

感染症をきっかけに、本来は細菌やウイルスを攻撃するはずの免疫が、誤って自分自身の神経を攻撃してしまうことで発症するとされている。

症状としては、手足のしびれや脱力から始まり、重症化すると呼吸に関わる筋肉まで麻痺し、人工呼吸器が必要になるケースもある。

カンピロバクターという細菌への感染は、ギラン・バレー症候群を引き起こす代表的な原因の一つとして知られている。

カンピロバクターは市販の鶏肉の表面や内部に付着していることが多く、加熱が不十分なまま食べることで感染するリスクが高まる。

なぜ「とりわさ」は危険なのか

「とりわさ」や「鶏刺し」といった生や半生の鶏肉料理は、九州をはじめとする一部地域で古くから親しまれてきた食文化だ。

新鮮な鶏肉であれば安全だと考えている人も少なくないが、カンピロバクターは新鮮さとは関係なく、処理の過程で肉の表面に付着することが多いとされている。

厚生労働省などによれば、カンピロバクター食中毒を発症させるために必要な菌の量はごくわずかとされ、少量の付着でも感染が成立してしまう点が厄介だ。

カンピロバクター自体は熱に弱く、中心部の温度を75度以上で1分以上加熱すれば死滅するとされている。

つまり見た目や鮮度にかかわらず、十分に火を通していない鶏肉には常に一定のリスクがあるということになる。

食中毒からギラン・バレー症候群への進行という「見えにくいリスク」

カンピロバクターに感染した場合、多くは下痢や腹痛、発熱といった一般的な食中毒の症状にとどまる。

問題は、感染から数日から数週間後に、一部の人にギラン・バレー症候群が発症することがあるという点だ。

食中毒の症状が治まった後に手足のしびれが出てきても、鶏肉が原因だと結びつけて考える人は少ないだろう。

この「時間差」こそが、カンピロバクター由来のギラン・バレー症候群を見えにくいリスクにしている最大の要因だと言える。

金さんのケースのように、発症から人工呼吸器が必要になるまで数日という急激な進行をたどることもあり、決して軽視できる話ではない。

SNSでの反応と、なぜ今トレンド入りしたのか

金さんの体験は、もともと朝日新聞の取材によって報じられたものだが、2026年8月に入りTogetterなどのまとめサイトで改めて紹介されたことをきっかけに、X上で急速に拡散した。

togetterのコメント欄には、「目玉しか動かない時期が1カ月あった」という、別の患者による体験談も紹介されており、症状の深刻さに驚く声が相次いでいる。

「とりわさが好きでよく食べていたが、これを見てやめようと思った」「新鮮なら大丈夫だと思っていた」といった反応が目立ち、食習慣を見直すきっかけになっている人も多いようだ。

一方で、生の鶏肉料理を提供する飲食店の中には、仕入れや調理の段階で徹底した衛生管理を行っている店もあり、一律に危険視するのは行き過ぎだという意見も見られる。

筆者としては、リスクをゼロにはできない以上、食べる側が正しい知識を持ったうえで選択することが何より重要だと感じる。

この話のポイントを整理すると

2023年12月27日、金吉男さん(67)が左手の違和感を自覚

数日で呼吸困難となり、人工呼吸器を装着してICUへ

入院期間は約5カ月間、車いす生活に

原因はカンピロバクター感染によるギラン・バレー症候群

加熱の目安は中心温度75度以上で1分以上

項目 内容
発症日 2023年12月27日
当事者 金吉男さん(67・医師)
入院期間 約5カ月間
原因菌 カンピロバクター(生・半生の鶏肉に付着)
安全な加熱の目安 中心温度75度以上・1分以上

家庭でできる予防のポイント

家庭で鶏肉を扱う際にも、いくつか気をつけたいポイントがある。

まず、鶏肉を切ったまな板や包丁は、他の食材(特に生で食べる野菜やサラダ)と共用しないことが基本だ。

調理後は中心部までしっかり火が通っているか、切り口の色や肉汁の透明度で確認する習慣をつけるとよい。

また、鶏肉を触った後の手洗いを徹底することも、二次汚染を防ぐうえで欠かせない。

外食で生や半生の鶏肉料理を選ぶ場合は、衛生管理が徹底された信頼できる店を選ぶという意識も重要になる。

医療現場から見た「回復」という視点

ギラン・バレー症候群は、発症直後こそ深刻な麻痺症状を伴うが、多くの場合は数カ月から1年程度のリハビリを経て、症状が改善していく病気でもある。

金さんの場合も、約5カ月間の入院生活を経て、現在は車いすを使いながら日常生活を送っているとされる。

完全に元の状態へ戻ることが難しいケースもある一方で、早期の診断と適切な治療によって、重症化を防げる可能性も指摘されている。

手足のしびれなど、食中毒からしばらく経ってから現れる神経症状は見過ごされやすいだけに、少しでも異変を感じた場合は早めに医療機関を受診することが重要だ。

金さん自身が医師でありながら「避けられたリスクだった」と振り返っている点は、専門知識の有無にかかわらず誰もが直面しうる問題であることを物語っている。

豆知識:カンピロバクター食中毒は年間どれくらい発生しているのか

カンピロバクターは、日本国内の細菌性食中毒の中でも患者数が特に多い原因菌の一つとして知られている。

厚生労働省の食中毒統計では、原因食品が判明した事例の多くで鶏肉料理が関係しているとされ、飲食店や家庭での加熱不足が主な原因に挙げられている。

ギラン・バレー症候群を発症するのはカンピロバクター感染者のうちごく一部にとどまるとされるが、発症した場合の症状の重さを考えると、決して「まれだから安心」とは言い切れない。

食品衛生の専門家の間でも、生食用として提供される鶏肉には、通常の加熱用とは異なる厳格な衛生基準が必要だという指摘が根強い。

まとめ

加熱不十分な鶏肉が原因でギラン・バレー症候群を発症し、車いす生活になった金さんの体験は、身近な食習慣に潜むリスクを改めて浮き彫りにした。

カンピロバクターは新鮮さや見た目では判断できず、しっかりとした加熱だけが確実な予防策になる。

「とりわさ」のような生の鶏肉料理を楽しむこと自体を否定する必要はないが、リスクを正しく理解したうえで選択することが何より大切だ。

今回の拡散をきっかけに、家庭や飲食店での鶏肉の扱い方をあらためて見直す人が増えることが期待される。

Wooder

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