ユニクロU、クリストフ・ルメール氏が退任 10年目のラストコレクション

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「ユニクロU」でおなじみのアーティスティックディレクター、クリストフ・ルメール氏が2026年秋冬コレクションを最後に退任することが明らかになった。

2016年の始動からちょうど10年目となる今回のラストコレクションは、9月11日に発売される。

長年ユニクロのパリコレクションを支えてきた同氏の退任は、いまのところファッション業界紙を中心に報じられているのみで、一般にはまだあまり知られていない。

そこで今回は、ルメール氏の経歴からユニクロUの成り立ち、そして今後の展開まで、背景を丁寧に整理してお伝えする。

ユニクロUとは何か

「ユニクロU」とは、ユニクロが2016年にスタートさせた、パリ発のデザインラインである。

正式には「Uniqlo U」と表記され、フランス・パリにある「パリR&Dセンター(研究開発拠点)」から生まれる商品群を指す。

ユニクロは以前から「LifeWear(ライフウェア、究極の普段着という意味の造語)」というコンセプトを掲げてきたが、ユニクロUはその考え方をより洗練された形で体現するラインとして企画された。

第1弾コレクションは2016年9月30日に発売され、シンプルながらも仕立てのよいアウターやニットが話題を呼んだ。

きっかけとなったのは、2015年10月2日に発売された「UNIQLO AND LEMAIRE(ユニクロ アンド ルメール)」というコラボレーションの成功だった。

このコラボは世界16の国と地域で展開され、ウィメンズ31型、メンズ25型というボリュームで発売され、当時から高く評価されていた。

この成功を受け、ユニクロはルメール氏を単発のコラボ相手ではなく、パリの開発拠点を率いるアーティスティックディレクターとして迎え入れることを決めた。

2016年6月8日に正式に就任が発表され、同年秋からユニクロUという常設ラインとして本格始動することになった。

以来10年間、ユニクロUはユニクロの中でも「大人向け」「テーラリング(仕立て)重視」というポジションを担い続けてきた。

クリストフ・ルメール氏とは何者か

クリストフ・ルメール氏は1965年、フランス東部のブザンソン生まれのファッションデザイナーである。

美術学校在学中にデザイナー、ティエリー・ミュグレーのアトリエでアルバイトをしたことがきっかけでファッションの道に進み、イヴ・サンローランなどでの経験を経て、1990年に自身の名を冠したブランド「クリストフ・ルメール」を設立した。

2000年から2006年まではフランスの老舗ブランド「ラコステ(LACOSTE)」のクリエイティブディレクターを務め、その間は自身のブランドを一時休止していた。

特筆すべきは、2010年にラグジュアリーメゾン「エルメス(HERMES)」のレディスウェア部門のアーティスティックディレクターに就任したことである。

2011年春夏コレクションからスタートし、2015年春夏コレクションを最後に退任するまで、高級メゾンのデザインを牽引した経歴を持つ。

つまりルメール氏は、エルメスという世界最高峰のラグジュアリーブランドと、ユニクロという世界最大級のSPA(製造小売業)ブランドの両方でデザインを手がけたことになる。

この「振れ幅」の広さこそが、ルメール氏がファッション業界で長年評価され続けてきた理由と言えるだろう。

なお2011年には、パートナーであるサラ=リン・トラン氏が自身のブランドに加わったのを機に、ブランド名を「クリストフ・ルメール」から「LEMAIRE(ルメール)」へと改めている。

このトラン氏こそが、後にユニクロUでもルメール氏とともにアーティスティックディレクターを務めることになる人物である。

10年間の軌跡を数字で振り返る

ここでユニクロUの10年間の歩みを、具体的な数字とともに整理しておきたい。

起点は2016年6月8日のアーティスティックディレクター就任発表であり、同年9月30日に第1弾コレクションが発売された。

そこから数えると、2026年9月11日に発売されるラストコレクションまでちょうど10年という節目を迎えることになる。

このラストコレクションには「10th Anniversary Collection」という副題が付けられており、テーマは「Confidence in Form(フォルムへの確信)」と名付けられている。

ラインナップはメンズが17型、ウィメンズが14型、バッグなどのグッズが2型という構成だ。

価格帯を見ると、アウターが6,990円〜12,900円、シャツが3,990円、パンツが4,990円、カットソーが1,500円〜5,990円と、ユニクロらしい手の届きやすい設定になっている。

販売はフルラインナップが全国101店舗とユニクロオンラインストアで展開され、一部アイテムは国内の全店舗で取り扱われる予定だ。

また2024年秋冬シーズンからは、トラン氏が2人目のアーティスティックディレクターとして正式に加わり、二人体制での創作が続けられてきた。

つまり今回のラストコレクションは、ルメール氏だけでなくトラン氏にとっても一つの区切りとなる。

改めて振り返ると、ユニクロUは単発のコラボレーションで終わらず、10年という長期にわたって一つのラインとして定着した点が特徴的だ。

ユニクロが手がけてきた著名デザイナーとのコラボレーションは他にもいくつかあるが、常設ラインとして10年間続いた例は珍しく、その意味でもユニクロUは特別な存在だったと言える。

価格帯を通常のユニクロ本体ラインと比べると、アウターで数千円ほど高い設定になっているものの、それでもラグジュアリーブランドの同カテゴリー商品と比べれば一桁以上安い水準にとどまっている。

手頃な価格でありながらパリのデザインチームによる仕立てを楽しめるという立ち位置こそが、10年間支持され続けた最大の理由だったのではないだろうか。

できごと 時期
アーティスティックディレクター就任発表 2016年6月8日
ユニクロU 第1弾コレクション発売 2016年9月30日
サラ=リン・トラン氏が共同ディレクターに就任 2024年秋冬シーズン
ラストコレクションであることが判明・報道 2026年8月24日
「パリのデザインチームが継承」と続報 2026年8月27日
ラストコレクション(26年秋冬)発売 2026年9月11日

なぜこのタイミングでの退任なのか

公式発表では、退任の直接的な理由について詳細な説明はされていない。

ただし今回の発表資料でルメール氏自身は「この10年間は、私たちのデザイナー人生における最高の時期のひとつだった」とコメントしており、円満な区切りであることをうかがわせる。

さらに「優秀なマーチャンダイザーやR&Dチームと働き、日本人ならではの品質に対する情熱、完璧さと向上を絶えず追求する姿勢に触れ、多くのことを学んだ」とも語っており、ユニクロの開発体制そのものへの敬意もにじませている。

ここからは筆者の見解になるが、ちょうど10年という区切りの良いタイミングであることに加え、2024年秋冬からトラン氏との共同ディレクター体制を敷いていた点も見逃せない。

これは、後継への移行を段階的に進めるための布石だった可能性が高い。

実際、今回の発表でも「ユニクロ ユーならではの緻密なテーラリングとタイムレスなデザインは、そのまま第2章へと続く」という言葉が添えられており、ブランドそのものは終了しないことが強調されている。

つまり今回の一件は、いわゆる「ブランド終了」ではなく、あくまで創業デザイナーの世代交代と捉えるのが実態に近いだろう。

著名デザイナーとファストファッション企業のコラボレーションは、これまでも数年単位で契約が更新されないまま自然消滅するケースが目立ってきた。

その中でユニクロUのように、退任のタイミングと理由を「10周年」という分かりやすい節目とともに公表し、後継体制まで同時に発表するケースは比較的珍しい。

この透明性の高さも、ユニクロというブランドが長期的な信頼を重視していることの表れと見ることができるだろう。

ラストコレクションの中身をチェック

肝心の中身についても見ておこう。

今回のラストコレクションは、メンズ17型・ウィメンズ14型・グッズ2型という、これまでのシーズンと比べても標準的なボリューム感でまとめられている。

テーマである「Confidence in Form」という言葉には、10年かけて磨き上げてきたシルエットや仕立てへの自信が込められていると解釈できる。

価格帯もアウターが6,990円〜12,900円と、ユニクロの中では比較的高めながらも、素材や縫製にこだわった仕立てを考えれば妥当な設定と言えるだろう。

単なる「ユニクロの上位ライン」ではなく、パリのデザインチームが独自に開発したものづくりの集大成として位置づけられている点が興味深い。

発売は9月11日で、全国101店舗とオンラインストアでフルラインナップが購入可能になる。

アイテム構成を見ると、シャツやパンツ、カットソーといった定番アイテムに加え、アウターが価格帯の上限である12,900円まで設定されている点も見逃せない。

これは、あくまで「ユニクロの一部門」でありながら、生地選びや縫製にはそれなりのコストをかけていることの裏付けと言えるだろう。

個人的には、10年分の集大成というだけあって、過去のシーズンで人気の高かったシルエットやディテールが随所に反映されているのではないかと予想している。

メンズ17型・ウィメンズ14型という数字だけを見るとコンパクトに思えるが、1型あたりに複数のカラーバリエーションが用意されるのが通例であり、実際に店頭に並ぶアイテム数はさらに多くなる見込みだ。

「第2章」はどこへ向かうのか

もっとも気になるのは、ルメール氏とトラン氏が去ったあと、ユニクロUがどうなるのかという点だろう。

2026年8月27日に伝えられた続報によれば、来春以降は同じ「パリR&Dセンター」に所属するデザインチームが創作を引き継ぐことが明らかになっている。

つまりブランドの拠点自体は変わらず、あくまでディレクターだけが交代する形になる。

ユニクロ側は「第2章へと続く」という表現を使っており、ブランドの終了ではなく継続を強く打ち出している。

筆者としては、創業デザイナー不在でも同じ理念を維持できるかどうかが、今後の焦点になると見ている。

ラグジュアリーブランドの世界では、創業デザイナーの退任後にブランドの個性が薄れてしまうケースも少なくない。

一方でユニクロUは、これまでもチームでのものづくりを重視してきた経緯があり、個人の名前に依存しすぎない体制を10年かけて築いてきたとも言える。

その意味では、後継チームへの移行は他のケースに比べて比較的スムーズに進む可能性がある。

次に発表されるであろう27年春夏コレクションの内容が、この移行の成否を占う最初の試金石になりそうだ。

また今回の体制変更は、ファーストリテイリングという企業が海外の有力デザイナーとどう向き合ってきたかを考える上でも興味深い事例だ。

ルメール氏を単なる「客員デザイナー」としてではなく、パリの開発拠点そのものを任せる形で10年間起用し続けたことは、外部人材を長期的にブランドの中枢に取り込むという同社の戦略の一端を示している。

今後、後継のデザインチームが個人名を前面に出さない形でどこまでブランドの求心力を維持できるかは、ユニクロ全体のグローバル戦略にも影響しうる注目ポイントだ。

補足情報

ここで一つ、混同されがちな豆知識を紹介しておきたい。

UNIQLO AND LEMAIRE(2015年)=期間限定コラボレーション

Uniqlo U(2016年〜)=ユニクロの常設デザインライン

LEMAIRE=ルメール氏個人が手がける独立ブランド

ユニクロと業界の関わりで見落とされがちなのが、「UNIQLO AND LEMAIRE」というコラボレーションラインと「Uniqlo U」は、名前が似ているものの別のプロジェクトだという点だ。

前者は2015年10月2日発売の期間限定コラボであり、後者はそこから発展して2016年に生まれた常設ラインである。

またルメール氏個人のブランド「LEMAIRE」は、ユニクロUとは資本関係のない完全に独立したブランドであり、今回の退任後もパリを拠点に活動を続ける見込みだ。

この3つを混同して語られることも多いため、整理しておくと理解しやすい。

まとめ

今回の発表をまとめると、ユニクロUを2016年から10年間率いてきたクリストフ・ルメール氏とサラ=リン・トラン氏が、2026年9月11日発売の26年秋冬コレクションを最後に退任することが明らかになった。

来春以降はパリR&Dセンターのデザインチームが引き継ぎ、ブランド自体は「第2章」として継続する方針だ。

現時点では業界紙を中心とした報道にとどまっているが、10年という節目でのディレクター交代は、今後のユニクロのグローバル戦略を占う上でも注目しておきたいトピックである。

発売される9月11日には、ぜひラストコレクションの実物を店頭でチェックしてみてほしい。

Wooder

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