「所得税還付金の振込完了のお知らせ」メールは本物?e-Taxを装う偽アプリと銀行アプリ偽画面の手口・対処法
「【要確認】所得税還付金の振込完了のお知らせ」という件名のメールが届いて、ドキッとした人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、メールのボタンから「アプリを入れてください」と誘導してくるものは偽物と考えてください。
2026年9月から10月にかけて、肥後銀行・川崎信用金庫・大阪シティ信用金庫などが相次いで注意を呼びかけているのが、本物の銀行アプリの上に「偽のログイン画面」をかぶせて暗証番号を盗むという手口です。
この記事では、還付金メールの見分け方と、偽アプリの仕組み、もし入れてしまったときの対処法を順番に整理します。
「還付金メール」と「銀行アプリ偽画面」はどうつながっているのか
まず、今回の詐欺は2段構えになっています。
入口は国税庁(e-Tax)や通販会社をかたるメールで、本当の狙いは銀行口座のログイン情報です。
川崎信用金庫の注意喚起では、流れが次の3段階で説明されています。
▶ ① 国税庁(e-Tax)の還付金のお知らせや、通販サイトの「ポイント失効」をかたるメールが届き、アプリのインストールを促される
▶ ② メールのリンクを開くと、本物そっくりの「偽のアプリストア」に案内され、不正なアプリを入れさせられる
▶ ③ その後、本物の銀行アプリを開くと、上に偽のログイン画面が重なって表示され、IDやパスワードを入力すると盗まれる
ここで出てくる「不正アプリ」とは、見た目は普通のアプリでも、裏でスマホの画面を監視したり操作したりする機能を持つ悪意あるアプリのことです。
肥後銀行は、こうした不正アプリを入れると端末の操作が外部から監視・制御されることがあると説明しています。
川崎信用金庫も、一部の信用金庫で実際に被害が出ていることや、スマホを遠隔操作された事例があることを明らかにしています。
注意喚起を出した金融機関と時期
報道や各金融機関の公式サイトで確認できた主な注意喚起をまとめると、次のとおりです。
| 金融機関 | 時期 | 内容のポイント |
|---|---|---|
| 肥後銀行 | 2026年9月18日 | 銀行アプリの起動を検知して偽の入力画面を重ねる。不正送金の被害も報告 |
| 川崎信用金庫 | 2026年10月14日(報道) | e-Taxや通販のポイント失効をかたるメールが入口。一部の信用金庫で被害 |
| 大阪シティ信用金庫 | 2026年10月21日 | 偽画面で認証情報を盗む手口に注意。自庫アプリでの被害は未確認 |
肥後銀行によると、偽メールや広告がかたる相手は国税庁だけではありません。
ポイントサイト、航空会社、カード会社、SNS広告など、さまざまな企業や機関が装われています。
つまり「国税庁からのメールだけ気をつければいい」という話ではなく、「メールやSMSのリンクからアプリを入れさせようとするもの」全般が危険だということです。
「所得税還付金の振込完了のお知らせ」メールの見分け方
2026年10月26日のおたくま経済新聞の記事では、筆者のもとに10月21日、「【要確認】所得税還付金の振込完了のお知らせ」という件名のメールが届いたことが紹介されています。
このメールはe-Taxを名乗り、「Android版e-Taxアプリ」のダウンロードボタンが付いていました。
送信元のアドレスやリンク先はメールごとに違う一方で、件名と本文は同じだったそうです。
本物かどうかを見分けるうえで一番大事なのは、国税庁の正規の通知の仕組みを知っておくことです。
国税庁の案内によると、e-Taxで還付申告をして「国税還付金振込通知書」の電子受け取りを選んだ場合、通知書はe-Taxの「通知書等一覧」に格納されます。
メールアドレスを登録していれば「格納されました」というお知らせメールは届きますが、確認はあくまでe-Taxにログインして行う仕組みです。
見分けるポイントを整理すると、次のようになります。
▶ メール内のボタンからアプリのダウンロードを求めてくる → 偽物を強く疑う
▶ 「本日中」「期限切れ」など急がせる言葉がある → 典型的な詐欺の特徴
▶ 送信元アドレスのドメインが国税庁(nta.go.jp)と違う → 偽物の可能性大
▶ そもそも還付申告をしていない、または振込通知の電子受け取りを選んでいない → 届く理由がない
ただし、送信元アドレスは偽装できるので、アドレスが本物っぽくても安心はできません。
迷ったらメールのリンクは使わず、ブラウザで国税庁やe-Taxの公式サイトを自分で開いて確認するのが確実です。
なぜ「本物の銀行アプリ」を開いても安心できないのか
この手口の一番いやらしいところは、利用者は本物の銀行アプリを開いているという点です。
これまでのフィッシング詐欺は、偽サイトに誘導してIDを入力させるものが中心でした。
そのため「アプリから操作すれば安全」「ブックマークから開けば大丈夫」というのが定番のアドバイスだったと思います。
ところが今回の手口では、銀行アプリ自体は本物のまま、上に偽の画面がかぶせられます。
見慣れたアイコンをタップして、見慣れたアプリが立ち上がるので、違和感に気づくのはかなり難しいはずです。
個人的には、「アプリなら安全」という常識が通用しなくなってきたことが、今回いちばん重く受け止めるべき点だと感じます。
逆に言えば、防ぐポイントはかなりはっきりしています。
偽画面を出すためには、まず不正アプリをスマホに入れさせる必要があるからです。
つまり「公式ストア以外からアプリを入れない」という一点を守れば、この手口の入口はふさげるということになります。
肥後銀行も、メールやSMSで直接アプリのダウンロードURLを案内することはないと明言しています。
「銀行や役所はメールでアプリのリンクを送ってこない」と覚えておくだけでも、かなりの被害は防げるはずです。
もしアプリを入れてしまった・入力してしまった場合の対処法
すでにメールのボタンからアプリを入れてしまった、または銀行のIDやパスワードを入力してしまった場合は、とにかく早く動くことが大切です。
▶ すぐに取引先の銀行・信用金庫に連絡する(不正送金を止めてもらうため。各金融機関もまず連絡するよう呼びかけています)
▶ 見覚えのないアプリをアンインストールし、「ユーザー補助(アクセシビリティ)」など広い権限を求めるアプリがないか確認する
▶ 別の安全な端末から、ネットバンキングやメールのパスワードを変更する
▶ 口座の入出金明細を確認し、身に覚えのない取引があれば警察にも相談する(警察相談専用電話 #9110)
肥後銀行は、端末の操作を広く許可するよう求められた場合は許可せず、アプリの利用を見直すよう案内しています。
不安な場合は、携帯ショップでスマホの初期化について相談するのも一つの方法です。
補足情報:還付金はどうやって確認すればいい?
本当に還付金が振り込まれたかどうかは、次の方法で確認できます。
▶ e-Taxに自分でログインして「通知書等一覧」を見る
▶ 振込先に指定した銀行口座の入金記録を確認する
▶ 分からない点は、国税庁の公式サイトに載っている所轄の税務署の番号に電話する
税務署が電話やメールで口座番号や暗証番号を聞いたり、ATMの操作を指示したりすることはありません。
「還付金があります」から始まる連絡は、昔から特殊詐欺の定番の口実なので、いつも以上に慎重になってください。
まとめ
「所得税還付金の振込完了のお知らせ」のように、e-Taxをかたってアプリのインストールを促すメールは、偽物と考えて開かないのが正解です。
その先には、本物の銀行アプリに偽のログイン画面をかぶせて暗証番号を盗むという、気づきにくい手口が待っています。
守るべきルールはシンプルで、アプリは公式ストアからだけ入れる、メールやSMSのリンクからは入れないの2点です。
もし入れてしまったら、すぐに銀行へ連絡してください。
家族、とくにスマホに慣れていない親世代にも、ぜひ一声かけてあげてください。
参考:
肥後銀行「スマートフォンへの不正アプリインストール誘導について」
川崎信用金庫 注意喚起
大阪シティ信用金庫 注意喚起(PDF)
おたくま経済新聞(2026年10月26日)
e-Tax「国税還付金振込通知書」の確認方法