スパイスカレーの次は「ビリヤニ」 2026年に家庭料理として定着する理由

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大阪発のスパイスカレーブームが定着してから数年、次に日本の食卓に上陸しようとしているのが「ビリヤニ」だ。

ビリヤニとは、インドやパキスタンなど南アジア発祥の炊き込みご飯で、鶏肉や羊肉をヨーグルトとスパイスでマリネし、長粒米のバスマティライスと重ねて炊き上げる料理を指す。

クックパッドが発表した「食トレンド予測2026」でも取り上げられ、2026年にかけて家庭用のビリヤニキットが相次いで発売されている。

今回は、ビリヤニがなぜここまで注目されているのか、具体的な数字とともに掘り下げる。

スパイスカレーブームからの流れと、ビリヤニが選ばれた背景

2018年頃、大阪発祥の「スパイスカレー」が全国的なブームとなった。

従来の欧風カレーとは異なり、複数のスパイスを使い、ルーを使わずに作るスタイルが若い世代を中心に支持を集めた。

このブームがひとつの転換点となり、消費者の間で「スパイスそのものを楽しむ」という食文化が根付いていった。

そして次に注目されているのが、ビリヤニである。

ビリヤニは16世紀ごろ、ペルシャからムガル帝国に伝わった宮廷料理がルーツとされ、南北インドやパキスタンで地域ごとに独自の進化を遂げてきた料理だ。

日本エスニック協会が選出する「エスニック食ランキング」では、2024年の「この夏絶対流行する!エスニック食」でビリヤニが1位を獲得している。

しかも4回目の受賞だという。

つまり、ビリヤニは一時的な話題ではなく、複数年にわたって支持を積み重ねてきた料理だと言える。

スパイスカレーで”スパイス慣れ”した消費者が、次の刺激を求めてビリヤニにたどり着いた、という見方が自然だろう。

クックパッド「食トレンド予測2026」で選出された理由

クックパッド株式会社は2025年11月26日、「食トレンド大賞2025・食トレンド予測2026」を発表した。

2025年の食トレンド大賞は「ワンプレートせいろ」、2位は「麻辣湯(マーラータン)」、3位は「かさまし料理」だった。

そして2026年の予測として選ばれた7つのキーワードのひとつに、ビリヤニが名を連ねている。

予測の背景には、料理に「香り」を求める消費者心理の高まりがあるという。

レモングラスやパクチー、各種スパイスなど、香りによって食欲を刺激し、食体験そのものを豊かにする料理が支持を集めており、ビリヤニはその象徴的な存在として位置づけられている。

実際、ビリヤニは米・肉・スパイスを密閉した鍋で一緒に炊き込む調理法が特徴で、カレーライスのようにルーを白米にかけるのではなく、米そのものにスパイスの風味が染み込む点が最大の違いだ。

この「一体感のある香り」こそが、次のトレンドとして選ばれた理由と考えられる。

選出された7つのキーワードには、ビリヤニのほかにも「一汁三菜ボウル」や「フュージョン薬膳」「煮込まないスープ」「空芯菜」など、世界各国の食文化をヒントにした料理が複数並んだ。

家庭用ビリヤニキットが続々登場

2026年にかけて、複数のブランドが家庭向けのビリヤニキットを発売している。

代表的なのが、スパイス料理研究家として知られる印度カリー子が手がける「炊飯器でかんたん!チキンビリヤニキット」だ。

価格は1,200円で、4人分のバスマティライスと、ブラウンカルダモンやベイリーフなど11種類のスパイスがセットになっている。

混ぜて炊飯器のスイッチを押すだけで作れる手軽さに加え、パッケージのQRコードからフライパン調理のレシピやアレンジレシピも確認できる。

同じく人気を集めているのが、ビリヤニ普及活動を続ける住本大輔氏が手がける「ぐるぐるスパイス」の「簡単ビリヤニキット」だ。

こちらも4人前で1,200円(送料無料)と、印度カリー子のキットと同水準の価格設定になっている。

必要な食材は鶏もも肉と玉ねぎだけというシンプルさも、支持されている理由のひとつだろう。

南インド料理店として知られる「エリックサウス」も、チキン・スパイス・バスマティライスがセットになった冷凍のビリヤニキットを1,800円で販売しており、家庭の炊飯器で2〜3人前を手軽に調理できる。

さらに専門店発のブランドとして「ビリヤニ大澤」も家庭用キットを展開しており、フライパン調理を前提に肉と米の比率や調理工程を突き詰めた設計になっているという。

大手から専門店まで、価格帯や調理方法の異なるキットが一斉に出そろってきたのが2026年の特徴だ。

印度カリー子:「炊飯器でかんたん!チキンビリヤニキット」1,200円・4人分

ぐるぐるスパイス:「簡単ビリヤニキット」1,200円・4人前

エリックサウス:「チキンビリヤニキット」1,800円・2〜3人前

ビリヤニ大澤:「チキン/マトンビリヤニキット」フライパン調理向け

ブランド 商品名 価格(税込) 人数目安 調理方法
印度カリー子 炊飯器でかんたん!チキンビリヤニキット 1,200円 4人分 炊飯器
ぐるぐるスパイス 簡単ビリヤニキット 1,200円 4人前 炊飯器/フライパン
エリックサウス チキンビリヤニキット 1,800円 2〜3人前 炊飯器(冷凍)
セブン-イレブン エリックサウス監修ビリヤニ 699円 1人前 そのまま(中食)

なぜ炊飯器やフライパンで「本格的な味」が再現できるのか

ビリヤニは本来、肉やスパイスでマリネしたものと半炊きの米を鍋に重ね、蓋を密閉して蒸し焼きにする「ダム(蒸らし)」という工程が必要な、手間のかかる料理だ。

専門店では熱々の炭を鍋の蓋の上に乗せて密閉度を高める店もあるほど、本格的な調理は決して簡単ではない。

しかし家庭用キットの多くは、スパイスの配合や火加減の管理をあらかじめ最適化することで、炊飯器の「炊き込みごはんモード」やフライパンだけで近い仕上がりを再現できるよう設計されている。

プロの技術をパッケージ化して家庭に届けるという発想は、スパイスカレーがルーやペーストの形で家庭に浸透した過程とよく似ている。

実際、コンビニでもビリヤニが並ぶようになった点は見逃せない。

セブン-イレブンは2024年7月9日、「エリックサウス監修ビリヤニ」を699円で発売した。

バスマティライスを使用した本格的な味わいが手に取りやすい価格で楽しめることから、ビリヤニという言葉自体の認知を広げる役割を果たしたと考えられる。

中食(なかしょく、コンビニなどで購入し家庭で食べる食事)の分野で先に認知が広がり、その後に家庭で作る動きが追いかける、という流れは新しい食トレンドの典型的なパターンだ。

こうした流れは、忙しい家庭でも本格的な料理を楽しみたいというミールキット市場全体のニーズとも重なっている。

下ごしらえの手間を肩代わりする商品設計が広がるほど、専門的で難しそうに見える料理ほどキット化の恩恵を受けやすい。

地方やイベントでも広がる「ビリヤニ効果」

ビリヤニ人気は都市部の専門店だけの現象ではない。

長野県内で開催されたイベントでは、ご当地食材を使ったビリヤニがわずか1時間で完売したという報告がある。

さらに、ビリヤニを目当てにした来場者の影響で、イベント参加者数が1.5倍に伸びたケースも報じられている。

都内の飲食店でもビリヤニを扱う店が増えており、たとえば東京駅八重洲地下街では骨付きラム肉を使ったビリヤニが2,900円、川崎駅前の店舗では1,980円、東京・若林のカレー店では1,500円で提供されているなど、専門店メニューとしての価格帯も徐々に定まりつつある。

1皿2,000円前後という価格帯は、ラーメンや一般的なカレー店の単価と比べても高めだが、それでも売り切れる店が出てきている点は、単なる話題性を超えた需要の強さを示していると言えるだろう。

家庭に定着するために超えるべきハードル

一方で、ビリヤニが完全に「我が家の定番」となるまでには、いくつかの課題も残っている。

まず、主原料となるバスマティライスは国産の米に比べて価格が高く、専門店やキットでも輸入米の在庫状況に左右されやすい。

実際、ビリヤニ大澤のオンラインストアでは、使用しているバスマティライスの品薄によってチキンビリヤニキットの販売が不定期・少量に制限されているという状況も報告されている。

また、マリネや炊き込みの工程には一定の手間がかかるため、平日の忙しい夕食よりも、週末や来客時の「ごちそう料理」として定着していく可能性が高い。

スパイスカレーのように毎日の定番になるのか、それとも特別な日の料理として定着するのか、この違いは今後のキット開発の方向性を左右しそうだ。

とはいえ、キットの価格が1,200円前後からと手頃であること、炊飯器だけで作れる商品が増えていることを考えると、ハードルは着実に下がってきている。

キット各社が価格や調理工程を工夫し続けている以上、数年以内に「特別な日のごちそう」から「時々作る定番」へと格上げされる可能性は十分にあるだろう。

メディアでの取り上げられ方から見る、いまの立ち位置

ビリヤニに関する報道を見渡すと、現時点ではクックパッドの発表を受けた食トレンド系メディアの記事が中心で、キット単体を掘り下げた一般ブログ記事はまだ多くない。

つまり2026年前半の段階では、ビリヤニは「これから広がる」フェーズにあり、爆発的な検索数の伸びを示す公開データはまだ限られているのが実情だ。

一方で、専門店の相次ぐ出店やコンビニでの取り扱い、複数ブランドによるキットの同時多発的な発売は、供給側の動きとしてはすでに整いつつあることを示している。

需要が数字としてはっきり表れるのは、むしろこれからだろうというのが率直な見立てだ。

ビリヤニをもっとおいしく楽しむための豆知識

バスマティライスは精米後も細長い形状を保ち、炊き上がるとパラパラとした食感になるのが特徴で、一般的な国産うるち米とは炊き方も異なる。

家庭でビリヤニを作る際は、洗米後に30分ほど浸水させること、炊飯器を使う場合は早炊きモードよりも「炊き込みごはんモード」を選ぶことが、キットのレシピでも推奨されている。

また、副菜として添えられる「ライタ」は、ヨーグルトにきゅうりや玉ねぎ、クミンなどを混ぜた冷たいソースで、スパイスの効いたビリヤニと合わせることで口の中をリセットしてくれる存在だ。

ビリヤニ単体だけでなく、こうした付け合わせまで含めてセットで楽しむと、専門店に近い満足感を家庭で再現しやすくなる。

なお、キットに入っているホールスパイス(粒のままのスパイス)は基本的に食べずに取り除きながら味わうものなので、初めて調理する場合はレシピの注意書きを確認しておくと安心だ。

まとめ

スパイスカレーブームを経て、日本の食卓は「香りを楽しむ」料理への関心を着実に高めてきた。

ビリヤニはその延長線上にある料理であり、クックパッドの食トレンド予測2026への選出や、複数ブランドからの家庭用キット発売が、その勢いを裏付けている。

1,200円前後から手に入るキットの登場で、専門店の味を自宅で再現するハードルは大きく下がった。

次の週末は、フライパンや炊飯器を使って、本格的な一皿に挑戦してみてはどうだろうか。

Wooder

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