滝音(たきおん)が「ダブルインパクト2026」初優勝、2896組の頂点に
2026年7月20日、日本テレビ・読売テレビ系で放送された「アサヒビール スマドリ ダブルインパクト2026 漫才&コント二刀流No.1決定戦」の決勝で、大阪発の実力派コンビ・滝音(たきおん)が初優勝を飾った。
エントリー総数2896組の頂点に立ち、獲得した優勝賞金は1000万円。
しかもこの日、滝音はくじ運が悪いとされる「トップバッター」からのスタートだった。
漫才とコントの合計得点951点で、わずか8点差を守り切った逆転劇の舞台裏と、結成10年をかけてたどり着いた頂点までの軌跡を掘り下げる。
大会の概要
「ダブルインパクト」は日本テレビと読売テレビが2025年に新設した賞レースで、正式名称は「アサヒビール スマドリ ダブルインパクト」だ。
コンセプトは「漫才か、コントか、いや、どっちもだ!」というもので、1組のコンビが漫才とコントの両方を披露し、その合計点で頂点を決めるのが最大の特徴になっている。
プロ・アマ・芸歴を問わず参加できるオープン戦であり、2026年大会には過去最多となる2896組がエントリーした。
記念すべき第1回(2025年)は2875組の中からニッポンの社長が初代王者に輝いており、滝音は2代目の栄冠を手にしたことになる。
決勝には8組が進出し、千原ジュニア、中川家・剛、後藤輝基(フットボールアワー)、田中卓志(アンガールズ)、辻ノ内クラシック(ニッポンの社長)の5人が審査員を務めた。
MCはかまいたちと橋本環奈が担当し、7月20日に3時間にわたる生放送で決着がついた。
優勝賞金1000万円に加え、トロフィーとスポンサーであるアサヒビール「スマドリ」商品1年分も贈られる。
▶ ななまがり
▶ 蛙亭
▶ ダンビラムーチョ
▶ TCクラクション
▶ 今夜も星が綺麗
▶ 滝音
▶ ドンデコルテ
▶ ビスケットブラザーズ
僅差8点差で掴んだ王座
決勝は8組の中からファーストステージを勝ち上がった滝音とドンデコルテによる、ファイナルステージでの一騎打ちとなった。
ファーストステージ、滝音はこの日のトップバッターとして漫才を披露し475点を獲得した。
一般的に賞レースでは審査員の点数が終盤になるほど伸びやすいとされ、最初の出番は不利とも言われる中での高得点だった。
興味深いのは出番順の巡り合わせで、ファーストステージでトップバッターを務めた滝音は、ファイナルステージでは一転して大トリを任される展開になった。
序盤で流れをつかみ、最後に勝負を締めくくるという理想的なポジションを両方経験したことになる。
迎えたファイナルステージ、滝音はコントに転じて476点をマークした。
合計得点は951点となり、ファーストステージで461点だったドンデコルテがファイナルステージの漫才で482点を積み増した合計943点を、わずか8点上回って優勝を決めた。
951対943という僅差のスコアは、今大会の審査基準の厳しさと、上位陣のレベルの高さを物語っている。
両者の得点を比較すると、どちらのコンビも漫才・コントの一方に偏らない安定した完成度を示していたことがわかる。
わずか8点という差は、5人の審査員のうち1人か2人の心証が変わっていれば結果が逆転していた可能性すらある紙一重の勝負だったとも言える。
| コンビ名 | ファーストステージ | ファイナルステージ | 合計得点 |
| 滝音 | 475点(漫才) | 476点(コント) | 951点 |
| ドンデコルテ | 461点 | 482点(漫才) | 943点 |
強豪ドンデコルテとの一騎打ち
準優勝に終わったドンデコルテも、決して格下の相手ではなかった。
小橋共作(37)と渡辺銀次(40)の2019年結成コンビで、直近の『M-1グランプリ2025』ではファーストラウンド3位から最終決戦に勝ち上がり準優勝という結果を残している。
さらに渡辺は『R-1グランプリ2026』のファイナリストにも選ばれ、最終決戦でわずか1票差の準優勝を経験するなど、まさに旬の実力者だった。
つまり滝音は、大型賞レースの決勝の舞台に直近で立ち続けてきた勢いのあるコンビを、僅差とはいえ正面から退けたことになる。
ドンデコルテが漫才一本で勝負してきたのに対し、滝音は漫才とコントの両輪で得点を積み上げるスタイルを貫いた点も対照的で、この結果は二刀流という戦略そのものの有効性を証明したとも言えるだろう。
M-1とR-1という異なる賞レースの決勝で結果を残してきたドンデコルテの地力を考えれば、ファイナルステージでの482点という高得点も納得がいく数字であり、滝音はまさに全盛期のライバルを土俵際で振り切ったことになる。
漫才とコントを見抜いた審査員の顔ぶれ
この大会の審査員には、漫才とコントそれぞれの領域で第一線を走ってきた顔ぶれが並んでいた。
千原ジュニアや中川家・剛は長年漫才の名手として知られる一方、田中卓志(アンガールズ)や辻ノ内クラシック(ニッポンの社長)はコント色の強いネタで評価されてきた芸人だ。
つまり審査員団自体が「漫才寄り」と「コント寄り」の視点を兼ね備えた構成になっており、どちらか一方のジャンルに偏った採点になりにくい仕組みだったと考えられる。
475点と476点という2つのステージでほぼ差のないスコアを両ジャンルの専門家からそれぞれ引き出せたことは、滝音のネタが特定の審査員の好みに依存しない普遍的な完成度を持っていたことの裏付けとも言えるだろう。
5人という審査員の人数も絶妙で、1人あたりの持ち点の重みが大きくなるぶん、好みの偏りが結果に直結しやすい環境だったはずだ。
それでもなお2つの異なるジャンルで安定したスコアを取り続けたことは、単なる一発ネタの当たり外れでは説明のつかない再現性の高さを感じさせる。
なぜ滝音は「二刀流」で強いのか
滝音の強さを語るうえで欠かせないのが、漫才とコントを高い次元で両立させる「二刀流」の完成度である。
さすけが繰り出す独特な語感の造語ツッコミと、秋定の緻密に作り込まれたボケが噛み合うことで、フォーマットが変わっても笑いの質が落ちない構造になっている。
実際、滝音は2020年の『キングオブコント2020』で決勝に進出しコントの実力を証明し、2022年には第7回上方漫才協会大賞で文芸部門賞を受賞するなど、漫才の分野でも高い評価を得てきた。
つまり今回の優勝は偶然の産物ではなく、片方の型に依存せず地道に磨き続けてきた実力が結実した結果だと見るべきだろう。
多くのコンビが「漫才師」あるいは「コント師」としての得意分野を軸に勝負する中、滝音はどちらの舞台に立たされても一定水準以上の完成度を出せる汎用性こそが最大の武器だと言える。
この汎用性は、ネタ作りを分業せず互いに意見を出し合いながら磨き上げるスタイルに支えられているとも言われており、コンビ仲の良さがそのままネタの精度に直結している構図が見えてくる。
加えて、漫才とコントでは客席やカメラへの意識の配り方、間の作り方も大きく異なるとされる中、同じ大会・同じ審査員を相手に2つの形式でともに470点台をたたき出した安定感は、単なる「器用貧乏」ではなく両ジャンルを本気で作り込んできた証拠だと見て間違いない。
結成10年、大阪から東京へ
滝音は2016年2月14日、さすけが前のコンビを解散した後、SNSを通じて秋定を誘って結成された。
コンビ名は、光速を超えて進むと仮定される仮想粒子「タキオン」に由来しており、既存の枠組みを超えていこうとする2人の姿勢を体現しているようにも読み取れる。
NSC大阪校出身のさすけ(34期)と秋定(33期)は大阪の劇場で地道にキャリアを積み、2022年の第52回NHK上方漫才コンテストで準優勝するなど着実に評価を積み重ねてきた。
転機となったのは2024年3月、活動拠点を大阪から東京へ移したことだ。
地方から中央への移籍は、劇場の客層やライバルの顔ぶれが一変する大きな決断であり、それまで積み上げてきたスタイルが通用するかどうかの賭けでもあったはずだ。
新たな環境に身を置く決断からわずか2年あまりで、2896組の頂点に立ったことになる。
結成から10周年という節目のタイミングでの初優勝は決して偶然ではなく、10年間積み上げてきたネタの引き出しと本番での胆力が、大舞台で最大限に発揮された結果だと言えるだろう。
長く大阪の劇場で鍛えられた土台に、東京進出後に磨かれた新しい感覚が加わったことが、今回の高得点につながった一因ではないかと見ることもできる。
1000万円の使い道と素顔のコメント
優勝が決まった瞬間、秋定は舞い落ちる紙吹雪を見て「紙吹雪をもらう風景って、こんなことあるんや」としみじみとコメントし、賞レースでの優勝が今回が初めてであることを噛みしめた。
優勝賞金1000万円の使い道については「家で2万円のサイドテーブルを買うか検討中」とスケールの小さな冗談を口にし、会場の笑いを誘った。
一方で今後については「沖縄やハワイなど仕事で行きたい場所がある」と語り、さらに「イチロー選手に会いたい」という夢も明かしている。
相方のさすけは、ネタ合わせの最中に秋定が台詞を言い間違えるハプニングがあっても2人で笑い合えるほど、気負いのないムードで本番に臨めたことが好結果につながったと振り返った。
賞金の使い道を大きく語らないところに、飄々とした滝音らしいキャラクターが表れていると言えるだろう。
1000万円という大金を手にしても浮足立たない様子からは、賞レース単体の勝ち負けよりも、日々の営業やライブを地道に積み重ねていくスタンスが変わらないことがうかがえる。
目先の高額な賞金よりも「イチロー選手に会いたい」という素朴な夢を語る秋定のコメントには、優勝してもなお等身大でいようとする2人らしさがにじみ出ていた。
補足情報
今大会は演出面でも話題を呼んだ。
週刊女性PRIMEなどは、若手芸人の一つひとつのボケに大きな笑い声の効果音を重ねる演出について、過剰だと感じた視聴者の声を伝えている。
また別の検証記事では、漫才とコントを同じ審査基準で採点することの難しさを指摘する声もあったと報じられた。
一方で、決勝進出者にはななまがりや蛙亭、ダンビラムーチョなど個性派コンビが名を連ね、単独ジャンルの賞レースでは見られない組み合わせが実現したことを評価する意見も多く見られた。
滝音とドンデコルテによるファイナルステージの緊張感は、放送内容の中でも見どころとしてSNSで高く評価されている。
なお大会は2025年に始まったばかりで、まだ歴史は浅い。
初代王者のニッポンの社長に続き、滝音が2代目王者となったことで、今後この大会が賞レースとしてどのように定着していくのかにも注目が集まりそうだ。
まとめ
滝音は結成10周年という節目に、2896組の頂点に立ち、漫才とコントの合計951点でダブルインパクト2026を制した。
トップバッターというハンデを乗り越え、ドンデコルテとの8点差を制した勝負強さは、10年間磨き続けてきた「二刀流」の実力そのものだ。
東京進出からわずか2年での栄冠は、これから滝音がさらに知名度を高めていく大きな追い風となりそうだ。
今後の賞金の使い道や新たなネタにも、引き続き注目していきたい。