2026年の土用の丑の日、うなぎが最大3割安に。値下げと増量が進む理由を解説
2026年の「土用の丑の日(どようのうしのひ)」は、本日7月26日だ。
例年ならうなぎの高騰がニュースになる時期だが、今年は様子が違う。
うなぎの卸売価格は前年より最大3割安となり、スーパーの売り場には値下げ・増量をうたう商品が並んでいる。
長年「うなぎ離れ」の一因とされてきた高値傾向が、稚魚の豊漁によって一転した格好だ。
この記事では、なぜ今年うなぎが安くなったのか、実際にどれくらい価格が下がったのか、具体的な数字とともに解説する。
土用の丑の日とは
土用の丑の日とは、季節の変わり目である「土用」の期間のうち、干支(えと)で「丑(うし)」にあたる日を指す。
土用は年に4回(立春・立夏・立秋・立冬の前約18日間)あるが、一般に「土用の丑の日」と呼ばれるのは夏の土用、つまり立秋前の期間を指すことが多い。
2026年は夏の土用の期間中に丑の日が1回しか巡ってこない年で、それが7月26日にあたる。
この日にうなぎを食べる習慣は、江戸時代の学者・平賀源内(ひらがげんない)が、夏場に売り上げが落ち込むうなぎ店のために「丑の日にうなぎを食べると夏バテしない」という宣伝文句を考案したという説が有名だ。
真偽はさておき、この語呂合わせのような宣伝がすっかり定着し、今では夏の風物詩として広く根づいている。
うなぎ高騰の背景
ここ十数年、うなぎ業界を悩ませてきたのが「シラスウナギ(うなぎの稚魚)」の不足だ。
養殖うなぎは、海から川に上ってくる透明で細長いシラスウナギを漁獲し、それを養殖池で育てて出荷する仕組みになっている。
つまりシラスウナギの漁獲量がそのまま数年後のうなぎの出荷量を左右する、非常にシンプルな構造だ。
ところが近年、海洋環境の変化や乱獲、生息環境の悪化などが重なり、シラスウナギの不漁が続いていた。
その結果、うなぎの卸売価格は右肩上がりとなり、専門店のうな重(うなじゅう)が1杯4000円、5000円という価格も珍しくなくなった。
「うなぎは高くて特別な日にしか食べられない食材」というイメージが、多くの消費者の中に定着していったのが、この10年ほどの流れだったといえる。
シラスウナギが2年連続で豊漁になった理由
その状況が2025年、大きく変わった。
2024年11月から2025年5月までの2024年度漁期のシラスウナギ採捕量(さいほりょう)は累計18.2トンに達し、前年同期の16.2トンを上回った。
さらに養殖池への池入れ量(いけいりりょう)で見ても、2025年3月末時点で16.7トンと、前年同期比で20.3%増を記録している。
鹿児島県内でも2025年度漁期は2月末時点で996キロと、1トン超えが確実な状況で、こちらも2年連続の豊漁となった。
なぜここまで漁獲量が回復したのか、正直なところ水産庁も含めてまだ完全には解明されていない。
シラスウナギの回遊(かいゆう)ルートや資源量は、黒潮(くろしお)の流れや水温、産卵場である太平洋沖の海流の変化など、複数の自然要因が絡み合って決まると考えられている。
個人的な見解を挟むと、単年の豊漁だけで「うなぎ資源が回復した」と結論づけるのは早計だろう。
ニホンウナギは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている魚種であり、2年連続の豊漁は明るいニュースではあるものの、資源管理の努力(漁獲枠の設定や密漁対策など)を緩めていい理由にはならない。
それでも、業界にとって2年続けての豊漁は、養殖計画を立てやすくする意味で非常に大きな安心材料になったはずだ。
実際にどれくらい安くなったのか
具体的な価格の話に移ろう。
豊洲市場(とよすしじょう)における活鰻(かつまん、生きたうなぎ)の卸売価格は、前年より2割以上下落したと報じられている。
これを受けて、スーパーの店頭価格も軒並み値を下げている。
たとえば鹿児島県内のスーパーでは、国産うなぎが1尾1922円で販売され、前年より約200円、比率にして約1割安い水準になった。
一方で中国産うなぎは値下がりの幅がさらに大きく、1尾800円台まで下がった商品もあり、3~4割安という大幅な値下げになっている。
宮崎市内のスーパーでも、前年同時期に1枚2500円で売られていたサイズのうなぎが、今年は2000円を切る価格で販売されており、こちらも約2割の値下げだ。
全体として、卸売段階では「3割安」、小売の現場では「1割~4割安」という幅のある値下げが起きている、というのが実態に近い。
値下げ幅にばらつきがあるのは、産地(国産か中国産か)、サイズ、各社の販売戦略によって差が出ているためだと考えられる。
前年と今年の価格を比較する
ここまでの数字を表に整理すると、値下がりの実態がより分かりやすくなる。
| 項目 | 2025年 | 2026年 | 変化率 |
| 豊洲市場 活鰻卸売価格 | 前年基準 | 前年より下落 | 2割以上安 |
| 鹿児島スーパー 国産うなぎ(1尾) | 約2122円(推計) | 1922円 | 約1割安 |
| 鹿児島スーパー 中国産うなぎ(1尾) | 前年より高値 | 800円台 | 約3~4割安 |
| 宮崎スーパー うなぎ(1枚) | 2500円 | 2000円未満 | 約2割安 |
| うなぎ卸売価格(全国的傾向) | 前年基準 | 前年より下落 | 最大3割安 |
この表からも分かるように、値下げ幅が大きいのは中国産うなぎで、国産は比較的値下がりが緩やかという傾向が見える。
これは、中国産うなぎの養殖規模が国産よりも大きく、豊漁による供給増の影響をより強く受けやすいためではないかと推測される。
もう一つ見逃せないのは、値下げの起点が「卸売価格」であって、店頭価格に反映されるまでには時間差がある点だ。
卸売価格が下がったからといって、翌日から全国のスーパーが一斉に値下げするわけではない。
在庫の入れ替わりや、各社の仕入れ契約のタイミングによって、値下げが店頭に反映される時期にはズレが生じる。
つまり、今回紹介した数字はあくまで7月下旬の土用の丑の日商戦における一時点の状況であり、今後さらに値下げが進む店舗もあれば、逆に据え置きのまま夏を終える店舗もあるだろう。
「値下げ」だけでなく「増量」路線も広がる
今年のスーパーの売り場を見ていて特徴的なのは、単純な値下げだけでなく「増量」路線の商品が増えている点だ。
これまでは1匹を家族で切り分けて食べる、あるいは細切れの蒲焼(かばやき)を少量パックで買うという消費スタイルが一般的だった家庭も多かった。
しかし価格が下がったことで「1人1匹丸ごと」楽しめる商品を前面に打ち出す売り方が可能になっている。
具体的には、以下のような動きが各社で見られる。
▶ 国産うなぎのサイズアップ商品を通常価格に近い値段で提供
▶ 中国産うなぎの値下げにより、1人分完結型のうな丼セットを拡充
▶ 冷凍うなぎコーナーの品揃えを増やし、国産・中国産を並べて選べる売り場に変更
ロケットニュース24による調査でも、国産冷凍うなぎが2138円、中国産冷凍うなぎが1080円という価格差が報告されており、価格帯の異なる商品を選べる状況が整ってきていることがうかがえる。
この「値下げ×増量」の組み合わせは、消費者にとって非常に分かりやすい訴求ポイントだ。
値段が下がっただけでは「今年は少し安いんだな」という程度の印象にしかならないが、「1人1匹丸ごと食べられる」という体験の変化を打ち出すことで、購買意欲を強く刺激できる。
実際、都内のうなぎ専門店では、豊漁による値下げの動きを受けて100人を超える行列ができた店舗も報じられており、需要の高まりを裏付けている。
専門店は「値下げ」より「据え置き」が目立つ
一方で、うなぎ専門店の対応はスーパーとは少し違う。
ある専門店では、シラスウナギの豊漁でうなぎの仕入れ値そのものは下がったものの、コメや炭(すみ)などの他の食材・燃料費が高騰しているため、うな重の価格は据え置きにしたと説明している。
この専門店では、土用の丑の日には例年1000食ほどのうな重・うな丼を提供しているという。
これは冷静に考えると、うなぎの原価が下がったからといって、店全体の運営コストが下がるわけではないという、当たり前だが見落とされがちな事情を表している。
人件費や光熱費、包材費などが上昇を続けている中で、うなぎの仕入れ値の下落分だけを値下げに回せる余裕がある店は、実はそれほど多くないのかもしれない。
この点で、スーパーの値下げ攻勢と専門店の価格据え置きは、対照的な戦略に見えて、実は同じ「原価上昇圧力」への異なる対応の仕方だと捉えるとわかりやすい。
スーパーは薄利多売で集客を狙い、専門店は品質と安定価格で常連客の信頼を維持する、という構図だ。
筆者としては、この専門店の判断は決して消極的なものではないと感じている。
うなぎの仕入れ値が下がったタイミングで安易に値下げに走ると、翌年以降に再び不漁で価格が跳ね上がった際、今度は値上げをせざるを得なくなる。
その値上げは客離れを招くリスクが大きい。
むしろ、多少の余裕がある年に値段を据え置き、経営の安定を優先するというのは、長く商売を続けるための堅実な判断とも言えるだろう。
スーパーの値下げ攻勢に目が行きがちだが、専門店の「動かない価格」にも、それなりの経営判断が背景にあることは知っておいて損はない。
今年うなぎを買うなら意識したいポイント
ここまでの内容を踏まえると、今年うなぎを買う際に意識したいポイントが見えてくる。
▶ 値下げ幅は中国産の方が大きい傾向にあるため、コスト重視なら中国産をチェックする
▶ 国産にこだわりたい場合も、前年より1割前後は値下がりしているため例年より手を出しやすい
▶ スーパーは「1人1匹丸ごと」タイプの商品が増えているので、家族の人数に応じてサイズを見極める
▶ 専門店は価格据え置きの店が多いため、行列や混雑を見越して時間帯をずらす
なお、今年はコメの価格も2026年1月ごろから下落傾向にあり、5キロ3000円を切る商品も店頭に出てきている。
うなぎとコメの両方が値下がりしているというのは、うな丼・うな重を楽しむ家庭にとって、なかなか嬉しいタイミングと言えるだろう。
補足:知っておきたいうなぎの豆知識
土用の丑の日には、実はうなぎ以外にも「う」のつく食べ物を食べるとよいという言い伝えがある。
梅干し(うめぼし)、瓜(うり)、うどんなどがその代表例で、これも「丑の日にうにつくものを食べると病気をしない」という語呂合わせに由来する。
また、うなぎの旬(しゅん)は本来、脂を蓄える秋から初冬にかけてだとされており、夏の土用の時期は必ずしも「うなぎが一番美味しい季節」ではない。
それでも夏バテ防止のスタミナ食として定着した背景には、うなぎに含まれるビタミンA・ビタミンB群が豊富であることも一因とされている。
科学的な栄養価と、江戸時代のキャッチコピーがうまく噛み合って生まれた行事食だと考えると、なかなか面白い話ではないだろうか。
まとめ
2026年の土用の丑の日は、長年続いたうなぎ高騰から一転、値下げムードで迎えることになった。
シラスウナギの2年連続の豊漁により、卸売価格は最大3割安、スーパーでは商品によって1割~4割安という値下げが実現している。
一方で専門店は価格据え置きが多く、値下げの恩恵は主に小売の現場に表れているのが今年の特徴だ。
値下げと増量が両立する今年は、久しぶりに「気軽にうなぎを楽しめる」土用の丑の日になりそうだ。
とはいえ、ニホンウナギは依然として資源保護が必要な魚種であることも忘れてはならない。
お得な値段を楽しみながらも、来年以降も豊漁が続くとは限らないという前提を持っておくと、うなぎとの付き合い方もより長続きするはずだ。